日本で最も成功したベンチャー企業はどこか。
そう聞かれたら、僕は間違いなく「マイクロソフト株式会社」と答えるだろう。
なぜか。
マイクロソフト株式会社は、決して「日本マイクロソフト」でも「マイクロソフト・ジャパン」でもないからだ。
仮にマイクロソフト株式会社が、米Microsoft Corp.の単なる日本法人だとしたら、社長が本社の副社長を兼ねるわけがない。
実はマイクロソフト株式会社こそが、いまや全世界を支配した(少なくとも二度は)、世界最大最強のソフトウェア・カンパニーを築いたその中枢にあるのだ。
Windowsの前にMicrosoftは二度の成功を収めている。
それはBASICとMS-DOSだ。
しかし実際にBASICを一番売ったのはMicrosoftではなくマイクロソフト株式会社であり、MS-DOSを開発するのを渋っていたビル・ゲイツを炊きつけて、単なるアプリ屋だったMicrosoftをOSメーカーに仕立てあげた立役者は西和彦である。
その意味で、マイクロソフト株式会社は間違いなく日本の会社であり、そして世界を文字通り変革した原動力となった組織なのである。
その、マイクロソフト株式会社が、いや、日本のコンピュータ産業がどのように勃興し、そして世界的な成功を収めていったか。その全てを語る資格がある人間は一人しか居ない。それは、マイクロソフト株式会社を興し、社長として活躍した、優れたプログラマーでもあり、卓越したジャーナリストでもある男、古川享を置いて他に居ない。
この業界に生きる人、コンピュータと普段接する人、ベンチャー企業で一山あてようと目論む人、そうした人にとってのまさに教養としての必読書が満を持してついに発売された。

僕が伝えたかったこと、古川享のパソコン秘史 (NextPublishing)
- 作者: 古川享
- 出版社/メーカー: インプレスR&D
- 発売日: 2015/12/11
- メディア: Kindle版
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愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
本書に記されたことは、まさしく歴史である。
日本でベンチャービジネスを興すと考えた時に、これほどの教科書は他にはない。
マイクロソフト株式会社は、日本アイ・ビー・エムでもオラクル・ジャパンでもない。まさしく、Microsoftのビジネスを完璧に支え、時には本社を追い落とした世界最強のソフトウェア開発者集団である。
残念ながら僕はHQに雇われていたので古川さんの直接の部下だったことはないが、現役時代の古川さんが現場に降りてきて叱責を飛ばしているのは聞いたことがある。
そのような凄まじい会社をなぜつくり、そしてどのようにして発展していったのか。
当事者が語るホンモノの情報は尊い。
現代はどのようにして作られたのか、ということを直接知ることができる数すくない資料として本書は非常に貴重なものである。