さてさて、いよいよ始まったSIGGRAPH ASIA2015のExhibition。
dwangoとUnityという、どちらかというとアカデミックな世界では存在感の薄いブランドをSIGGRAPHという国際学会でどうアピールするか。
もっといえば、研究者にウケる展示物とは何か。
そこで思いついたのが、「中に入れるあの箱(コーネルボックス)を作ろう」というアイデアでした。
コーネルボックス、つまり左右が赤と緑で、天井から面光源が照らされる箱は、コンピュータグラフィックスのあらゆる教科書に登場し、論文でも今でもたびたび使われるような、CGの研究者では知らぬものはいない箱です。
今回のUEI Research ✕ dwango ✕ Unityブースでは、実物大(?)のコーネルボックスに入ってバーチャルキャラクターであるユニティちゃんと記念撮影することができます。
実写であるにも関らず、人間の方が違和感を感じるという不思議さで、なかなか楽しいです。
実はこの箱は、UEIリサーチの西田友是教授と非常に関わりが深い箱なのです。
1985年、西田友是は照明光学をCGに応用することを世界で初めて実行し、それまではパキッとした影の表現しかできなかったコンピュータグラフィックスの世界に、半影(ソフトシャドウ)という概念を導入しました。
このソフトシャドウという概念を導入するときに、面を細かく分割したマイクロファセット(面素)と、マイクロファセットごとにレンダリングを行い、半球に当たる反射光の影響(フォームファクタ)を計算することでソフトシャドウを実現します。
西田友是の制作したCGは、広島大学の計算機室を模した非常に高度なもので、逆に高度でありすぎるが故に引用されませんでしたが、時を同じくしてコーネル大学では熱力学を応用して西田のソフトシャドウと同様の研究がなされ、その時、この理論を説明するためのシンプルな装置として、左右を赤と緑の壁に塗り分けた部屋が用意されました。
これが俗に「コーネルボックス」と呼ばれる箱です。
研究発表そのものは西田の方が先だったので、現在「ラジオシティ法」と呼ばれる、コンピュータグラフィックス表現になくてはならない理論の発明者の一人は西田友是なのですが、名称はコーネル大学が熱力学からとった「ラジオシティ」が一般によく使われるようになりました。
詳しい歴史については以下
http://nishitalab.org/user/nis/ourworks/radiosity/radiosity.html
西田先生はコンピュータグラフィックス学会で最も栄誉あるスティーブン・A・クーンズ賞を受賞しておられますが、なかでも最大の功績はラジオシティ法への貢献が大きいと思います。
今回はドワンゴのMIROさんがニコニコ超会議で使った技術を転用して、ユニティちゃんのバーチャルキャラクター(リアルタイムでモーションキャプチャーされてる)が鏡の箱に座ると鏡にユニティちゃんの身体と現実世界の人物が両方映り込んだり、セットに仕掛けたセンサー情報をもとにイメージベースドライティングをしていたりとやり過ぎなほど作りこまれています。
コーネルボックスがそこに存在しているだけで、とりあえず写真を撮って人に見せたくなるようなものをまず実現し、次に「なぜコーネルボックスがdwangoのブースにあるのか(UEIリサーチとは何か)」というメッセージを暗示させる二重の仕掛けになっています。
お陰さまでこの仕組は大成功で、MIROさんによると「ニコニコ超会議を上回るペースで利用されてる」ということで、早くも印画紙が足りなくなってきているそうですので、ご利用はお早めに。
けっこうみんな喜んでくれて、西川善司さんとかは特にいろんなポーズで撮ってくれたみたいです。
フリー素材らしい(?)ので、とりあえず引用させていただきました。
実際に見てみるとけっこう色んな意味で感動がありますので神戸のお近くにいる方は高いプリクラだと思ってExhibitionだけでも見に来たらいいと思います。
それでは本日もご来場お待ちしております
SIGGRAPH ASIAは明日までです