誰にでもプログラミングできる世界を
というのが僕のテーマである。
しかしここには2つの壁が立ちはだかる。
ひとつは、「プログラミングは未だに難しい」ということと、もうひとつは「そもそもプログラミングしたい人っていうのはどのくらいいるのか?」ということだ。
しかし、プログラミングの始まりは目覚まし時計の設定であり、ビデオの録画予約であるとすると、意外と重要なのは「プログラミング可能なこと(プログラマブルであること)」ではなく、「プログラミングしたいと思う動機付け」の方にあるのだろう。
なぜなら、人はプログラミングしたいと思う前に朝寝坊したくないと思うわけであり、プログラミングしたいと思う前にこの番組は見逃したくない、と思うからである。
逆にいうと、プログラミング可能な手段だけを提供しても、人間が「よし、プログラミングしよう」と思う動機付けがなければ、結局なにをどのようにプログラミングしたらいいのかわからないということになる。
大人向けの講座を何回もやっているけど、大人はプログラミングすることが目的化しているのでむしろ「なにを作ったらいいですか?」という質問をいつも受けることになる。それは手法の説明であって目的の説明でも設定でもないからだ。
子供の場合、「あれがやりたい」「これがやりたい」という動機付けがはっきりしている。
それは子供にとって、世界は無限に広く感じられ、自分の才能もまた無限に広いと錯覚しているからだろう。
プログラミングを汎用化すればもっと多くの人が使えるようになる、と思わなくもないが、それは本当にそうなのだろうか。

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こんな商品があった。
これは24時間を15分単位で電化製品のON/OFFをプログラミングできる機械である。
ホットカーペットから電灯まで、およそメカニカルスイッチが電源になっている機械ならなんでもプログラミングできる。
たとえば夕方になると自動的にホットカーペートとこたつの電源が入り、家に帰る頃には暖かくなっているとか、まあそういうことができる。
タイマーの設定というのはプログラミング的に言えば、イベントの設定である。
イベントはタイマーのように時刻だけとはかぎらない。

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赤外線リレーを使えば、実際に人が現れた時にスイッチが入るようなものを作ることも可能で、これは玄関などに設置すれば、帰ってきたらライトが自動的に点灯する、というようなこともできる。
もっとも、赤外線リレーとライトを接続するのは多少ホネが折れる。
したがって、目的が「帰宅時のライト自動点灯」であれば、ライトと一体化した製品の方がいい。

アイリスオーヤマ LED電球 人感センサー付 小形電球タイプ 3.9W(全光束:300 lm/昼白色相当)【斜め取付け専用】IRIS LDA4N-H-E17SH
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電球そのものに人感センサーを内蔵し、人が帰ってくると自動的に点灯。
その後、自動的に消灯するというスグレモノだ。
これを買おうと思ったり、これを設置するという行為は、実のところ立派なプログラミング行為である。
個々の赤外線リレーやライトをプログラミング的なパーツ、関数だとすれば、人感センサー一体ライトは、ライブラリといったところだろうか。
ただ、これでは少々自由度が低い。
かといって、Philips Hueのように電球をWiFiと接続するというのはやりすぎな気がする。

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これぞまさしくIoTだが、ネットの向こう側から自宅のライトを制御できるとして、それがどうした、ということなのだ。面白いけど、面白いだけだ。IoT製品が全て大道芸に見えてしまう所以である。
これは却って普通の人にはプログラミング不能である。
欲しいものは、人感ライトなのに、WiFiに接続して、スマートフォンを起動して、IFTTTかなんかでやるんだろうか。
実際、それは笑い話ではなくて、僕はLittle Bitsで光センサーが光を感知すると、その時間を密かに記録する、というプログラムを書いたんだけど、誤動作が多くて使い物にならなかった。

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だとすると、人感センサーライトは、やっぱりアイリスオーヤマの既成品を買うのがよろしい。実用的だし、なにしろテストされてる。テストされてるというのはプログラミングにおいて何よりも重要なことだ。自分で新しく書いたプログラムはテストされてない。そしてプログラムを書くことよりもテストすることの方に労力がかかる。
そしてそもそも、仮に人感センサー+帰宅時刻記録プログラムがちゃんと動いたとして、やはり「それがどうした」というそしりを免れることはできない。それはプログラム可能だから試しにプログラムしただけであって、それで何かをしたかったというわけではない。
タイマー、赤外線センサー、が作るイベントトリガーと、ライトというディスプレイ。
こんな単純なものであっても、赤外線センサー+ライトという、アイリスオーヤマの製品のほうが一般の人には分かりやすい。
そこの壁をいかに埋めるか
というよりも、いかにユーザーに意識せずにプログラミングさせるか。
そういうところに何か秘密がある気がする。
というわけで、「教養としてのプログラミング講座」の続編が書き上がりました。
発売はもうすぐかな。

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